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中国経済の実態を示す「中国版公定歩合」


2015年7月15日
澁谷 司


よく知られていますが、中国政府が発表する経済関係の数字はあまり信用できません。政府がしばしば数字を改竄するからです。

李克強首相が遼寧省のトップだった時代(2007年)、中国の経済数値で信頼できるのは、①電力消費量、②貨物輸送量、③銀行の貸付額ぐらいで、あとの数字はほとんどが“人工的”だと言っています。

一般に、中国経済を考える際、①不動産価格の変動、②輸出入総額、③海外からの対中投資額、④鉱工業生産高、⑤電力消費量、⑥消費者物価指数、⑦自動車の売上台数など、様々な指標から景気動向を探ります。

かつて我が国では、日本銀行の金融政策により、景気が良ければ“公定歩合”は引き上げられ、逆に、景気が悪ければ“公定歩合”が引き下げられました(現在ではそのタームは使用されていません)。

中国の経済規模は米国に次ぐ世界第2位ですが、同国は未だ発展途上国とも言えます。日本の“公定歩合”に相当する「中国版公定歩合」=「預金・貸出金利」を見れば、景気の良し悪しが容易に判断できるでしょう。

ここで、(1996年5月から)2015年6月までの中国人民銀行(中央銀行)による「預金・貸出金利」(特に「貸出金利」)の推移を一瞥したいと思います。

2008年9月15日、米有名企業リーマン・ブラザーズが経営破綻したのを契機に、世界中に不景気の波が拡がりました。当然、中国にもその影響が及びます。

「リーマン・ショック」後、中国政府は、同年9月(16日)、10月(2回)、11月、12月(23日)と矢継ぎ早に5回も利下げを行いました。

わずか3ヶ月あまりで、「1年~3年モノ貸出金利」が、7.29→7.02→6.75→5.67→5.40%と立て続けに引き下げられています。緊迫した状況が読み取れるでしょう。

08年12月の《預金金利2.25%、貸出金利5.40%》は、その後、10年秋まで続きます。この間、中国経済は明らかに良くなかったのです。

10年10月、「中国版公定歩合」は再び上昇(《預金金利2.50%・貸出金利5.6%》)に転じました。景気が回復してきたのです。しかし、11年7月の《預金金利3.50%・貸出金利6.65%》をピークに、12年6月から再び景気が減速(《預金金利3.50%・貸出金利6.40%》)し始めました。

最近では、4度(昨年11月、今年3月・5月・6月)、利下げが行われています。「1年~5年モノ貸出金利」が、6.00→5.75→5.50→5.25%と下落しました。

今年6月の《預金金利2.25%・貸出金利5.25%》ですが、「貸出金利」はここ約20年間で最低です。つまり、中国経済はこの期間で“最悪”と言っても過言ではないでしょう。