グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

検索

TOP >  コラム >  朝鮮労働党大会について

朝鮮労働党大会について


2016年5月15日
武貞秀士


北朝鮮では5月6日から朝鮮労働党大会第7回大会がおこなわれました。36年ぶりの党大会です。金正恩体制は「科学技術強国」を目標に掲げ、核実験とミサイル開発を続けながらも経済状況に改善があり、体制の基盤が固まったとの自信を持ったのでしょう。

金正恩第一書記は労働党委員長という新しいポストにつきました。党中央委員会政治局常務委員として崔竜海党書記と朴奉珠首相が新たに選出され、5人体制になりました。軍、党、経済、外交の責任者をバランスよく常務委員にしたわけです。党中央委員の129人の一人に、金正恩氏の実妹である金与正・党副部長を選出しました。金与正氏はこれまで以上に重要な行事や会議を取り仕切ることになるでしょう。

活動総括報告の内容で注目すべきことがいくつかあります。「わが国は、侵略的な敵対勢力が核で自主権を侵害しないかぎり、先に核兵器を使用しないだろう」と述べました。相手が核兵器を使用しなければ北朝鮮は核兵器を使用しないという宣言です。3月、北朝鮮は韓国で始まる米韓合同軍事演習について「実施するなら米韓両国に無差別の核攻撃を実施する」との談話を発表しました。核の先制使用を発表して2カ月で、核兵器の先制不使用を明らかにしたわけです。ただし、「自主権が侵害されないかぎり」という前提があります。北朝鮮は在韓米軍が韓国に駐留したり、米韓同盟が存続していたり、米韓軍事演習が行われることは、自主権の侵害になると非難してきました。ですから核政策の基本は変わっていませんが、世界に向けて宥和姿勢をアピールしたのでしょう。

米国に対しては、「制裁を中止し、敵対政策を撤回し、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換し、在韓米軍を撤収させる」と従来の要求を繰り返しました。ただ「責任ある核保有国として核拡散防止の義務を忠実に履行し、世界の非核化実現に努力する」と米国に秋波を送っています。「核兵器のない世界」を強調してきたオバマ大統領に対して、伊勢志摩でのG7会議を前に、米朝は共通の目標を持っているとアピールした部分です。

韓国に対しては、「民族自主、民族大団結、平和保障、連邦制実現が祖国統一の道を開くための方針だ」と対話姿勢を明確にしました。1980年の第6回労働党大会のときに、金日成主席が提案した高麗民主連邦共和国の構想を繰り返した部分です。日本に対しては「朝鮮の統一を妨害してはならない」と述べています。

権力基盤を固めた金正恩体制が、米朝協議を呼びかけ、統一に向けての対話攻勢の準備をはじめたことを示唆する党大会でした。