トランプ大統領の誕生
2016年11月15日
川上高司
異例ずくめの米大統領選が終わり、まさかの「トランプ大統領」が誕生し、まさに、「トランプ・ショック」の激震が世界中を走りました。世界は米国民の選択を驚愕をもって受け入れるしかありません。
トランプ氏は、白人労働者層の圧倒的な支持を得て当選しました。彼は「一握りのエリート支配を破壊する」代表であり、忘れ去られた「普通の白人」の立場を代弁し、愛国主義に立ったポピュリストです(2016年4月、フォーリン・アフェアーズ)。時計の針は8年前に戻り、白人優位社会が返ってきます。
選挙結果を見てみると、オハイオ州やフロリダ州などの激戦州でトランプ氏は進撃しました。中でも、オハイオ州(選挙人18)で勝利したあたりから潮目が変わりました。その後、ペンシルベニア(同20)、ノースカロライナ(同15)と次々とトランプ氏がとり、「フロリダを制するものは選挙を制する」と言われていたフロリダ州(同29)を押さえ、勝利を確実にしたのです。
CNNの出口調査では、トランプ氏は有権者の70%を占める白人票の58%を獲得しており、男性の53%に加え、女性の42%がトランプ氏に投票しました。黒人の88%はクリントン氏に投票しましたが、白人以外の人種(イタリア系含む)のうち、21%はトランプ氏に投票しています。
これに加え、トランプ支持を公言しないが、選挙ではトランプ氏に入れる「隠れ支持票」が選挙を左右したとも言われます。
トランプ氏が勝利したことで、白人の不満はある程度は消えるかもしれません。しかし、クリントン氏を支持した黒人やヒスパニック系の非白人、イスラム教徒、女性たちの不満は残ります。
さらに、深刻なのは党の分裂でしょう。ワシントン・エスタブリッシュメントたちが、どこまで「トランプ大統領」に協力するのでしょうか。彼らのトランプ嫌いは激しく、議会は上下両院とも共和党が維持しましたが、トランプ氏は関係修復ができるかが問われます。修復ができなければ、トランプ氏は内政でも外交でも政策を思うように展開できません。
トランプ氏は勝利演説で「分断で広がった傷を修復するときだ」「1つに団結した国民として一緒になるときだ」「米国を再び偉大な国にする」と約束しました。今後、米国がどうなっていくかは予測がつかないところです。
ただ言えるのは、トランプ氏は損得勘定で物事を考え、「アメリカンファースト(米国第一)」で外交政策を展開することです。オバマ政権の敷いた路線にはとらわれず、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や、地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」、イランとの核合意などが、軒並みひっくり返る可能性があります。
特に懸念されるのが日米同盟でしょう。トランプ氏は日本にさらなる安全保障のコスト負担を求め、「応じなければ在日米軍の撤収を検討する」とまで言っています。日本外交には、シビアにビジネスライクに徹するタフさが必要とされます。その意味では、日本にとって厳しい4年間になりそうです。
川上高司
異例ずくめの米大統領選が終わり、まさかの「トランプ大統領」が誕生し、まさに、「トランプ・ショック」の激震が世界中を走りました。世界は米国民の選択を驚愕をもって受け入れるしかありません。
トランプ氏は、白人労働者層の圧倒的な支持を得て当選しました。彼は「一握りのエリート支配を破壊する」代表であり、忘れ去られた「普通の白人」の立場を代弁し、愛国主義に立ったポピュリストです(2016年4月、フォーリン・アフェアーズ)。時計の針は8年前に戻り、白人優位社会が返ってきます。
選挙結果を見てみると、オハイオ州やフロリダ州などの激戦州でトランプ氏は進撃しました。中でも、オハイオ州(選挙人18)で勝利したあたりから潮目が変わりました。その後、ペンシルベニア(同20)、ノースカロライナ(同15)と次々とトランプ氏がとり、「フロリダを制するものは選挙を制する」と言われていたフロリダ州(同29)を押さえ、勝利を確実にしたのです。
CNNの出口調査では、トランプ氏は有権者の70%を占める白人票の58%を獲得しており、男性の53%に加え、女性の42%がトランプ氏に投票しました。黒人の88%はクリントン氏に投票しましたが、白人以外の人種(イタリア系含む)のうち、21%はトランプ氏に投票しています。
これに加え、トランプ支持を公言しないが、選挙ではトランプ氏に入れる「隠れ支持票」が選挙を左右したとも言われます。
トランプ氏が勝利したことで、白人の不満はある程度は消えるかもしれません。しかし、クリントン氏を支持した黒人やヒスパニック系の非白人、イスラム教徒、女性たちの不満は残ります。
さらに、深刻なのは党の分裂でしょう。ワシントン・エスタブリッシュメントたちが、どこまで「トランプ大統領」に協力するのでしょうか。彼らのトランプ嫌いは激しく、議会は上下両院とも共和党が維持しましたが、トランプ氏は関係修復ができるかが問われます。修復ができなければ、トランプ氏は内政でも外交でも政策を思うように展開できません。
トランプ氏は勝利演説で「分断で広がった傷を修復するときだ」「1つに団結した国民として一緒になるときだ」「米国を再び偉大な国にする」と約束しました。今後、米国がどうなっていくかは予測がつかないところです。
ただ言えるのは、トランプ氏は損得勘定で物事を考え、「アメリカンファースト(米国第一)」で外交政策を展開することです。オバマ政権の敷いた路線にはとらわれず、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や、地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」、イランとの核合意などが、軒並みひっくり返る可能性があります。
特に懸念されるのが日米同盟でしょう。トランプ氏は日本にさらなる安全保障のコスト負担を求め、「応じなければ在日米軍の撤収を検討する」とまで言っています。日本外交には、シビアにビジネスライクに徹するタフさが必要とされます。その意味では、日本にとって厳しい4年間になりそうです。