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トランプ大統領の「核の不安」


2017年4月15日
名越健郎


核戦争の危険度に継承を鳴らす米科学雑誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」が1月末、地球最後の日を示す「終末時計」を30秒進めて残り2分半とし、時計の針は冷戦終結後、最も「終末」に近づきました。

同誌は針を進めた理由として、トランプ米大統領の核に関する不穏な発言、米露の核軍拡、北朝鮮の核・ミサイル実験などを挙げていますが、確かに核のボタンを握るトランプ大統領の対応はヒヤヒヤさせられます。

2月に安倍晋三首相とフロリダ州の別荘でゴルフをした際、「フットボール」と呼ばれるブラックボックスが別荘内に無造作に置かれ、運搬役の武官も別荘内のレストランで一般客と写真を撮っていたことが、SNSに投稿されました。

1月末にプーチン大統領が電話協議で、新戦略兵器削減条約(START)の更新問題をただしたのに対し、トランプ大統領は新STARTを知らずに動揺し、側近に尋ねた後、「オバマによる悪い条約だ」と答えたそうです。

選挙戦中、米軍が日韓防衛への関与を減らす代わりに、両国の核武装を容認すると述べ、日本にショックを与えました。過激派組織「イスラム国」による対米攻撃には「核で反撃する」と発言したり、外交顧問に「核があるのになぜ使わないのか」と質問したこともあります。

共和党候補による討論会で、「戦略核三本柱」について尋ねられた際、これを知らずに動揺し、支離滅裂な発言をしたことがあります。就任前、核軍縮を唱えながら、就任後は一転して国防予算大幅増や核戦力近代化を指示しました。

公職や軍務の経験がなく、核兵器の認識に乏しい最高司令官が核のボタンを握ることはやはり不安です。

米議会でもそうした不安が強いようで、大統領の核先制使用を制限する法案が1月末、上下両院に提出されました。提案者の1人、エドワード・マーキー上院議員(民主)は、「トランプ大統領はテロ組織に対して核攻撃の検討を示唆している」と述べ、議会の同意なしに大統領には核兵器を使用させないと説明しました。

米国による北朝鮮への先制攻撃説も流れる中、北の若大将と同様、こちらの大将も危うい限りです。(了)