2018年のアメリカの外交政策は再び混迷
2018年元旦
川上高司
1月1日、ようやく混乱の2017年が過ぎ、新たな希望を持って新年を迎えたのもつかの間、トランプ大統領は早々に外交政策を混乱の闇に突き落としました。
トランプ大統領はツイッターで、パキスタンがアメリカのアフガニスタンでの対テロ政策に全く貢献していないばかりか「うそばかりつく」と非難し援助を打ち切ることを示唆し、「過去15年間に330億ドルを超える支援をしたのに、パキスタンはテロリストの天国を作り出しているだけ」とこきおろしました。
アメリカとパキスタンの関係はトランプ政権になってから険悪になっています。トランプ大統領はアフガニスタン情勢が一向に改善しない原因はパキスタンにあるとして、もっと犠牲を払うように圧力をかけてきました。パキスタンは、そもそもテロとの闘いを始めたのはアメリカであり、パキスタンはこれまで1230億ドルをつぎ込み6万人の殉職者を出してきた、これほどの多大な犠牲を払ってきてこれ以上なにをしろというのか、と不信感と怒りを募らせています。
パキスタンの不信感を払拭しようとテラーソン国務長官やマティス国防長官がパキスタンを訪問して、前向きな関係を確認したばかりだったその矢先のトランプ大統領の発言は、長年の同盟国との関係を損なうには十分だったようです。
アメリカは2億5500万ドルの支援を中止すると脅しをかけてきましたが、パキスタン側は援助の中止に対しては冷静です。アメリカが手を引いても経済的なダメージはそれほど大きくないと考えているからです。ここ近年、パキスタンは中国への経済依存が大きくなっています。中国からパキスタンのグワダールへと続くカラコルムハイウェイは中国の投資で整備され、物資の往来は盛んになっています。アメリカがいなくても、いまや中国が代わって支援してくれるので困ることはないのです。
実際、12月末には北京で中国、パキスタン、アフガニスタンの外相が集まり、会合を開きました。議題は現在の中国が行っているパキスタンへの経済支援をアフガニスタンまで伸ばすということでした。「地政学的にこれら3カ国は共通の利害をもち、トリプルウインで発展していく」と中国は本気です。
アメリカの外交政策は再び混乱の闇に陥りつつあり、アメリカの国益はますます損なわれつつあります。アメリカが脅しをかければ小国がひれ伏す時代はとうに終わっているのです。棍棒外交はいったい誰のための外交政策なのか、2018年を迎えるにあたり、ぜひトランプ大統領に尋ねてみたいものです。
川上高司
1月1日、ようやく混乱の2017年が過ぎ、新たな希望を持って新年を迎えたのもつかの間、トランプ大統領は早々に外交政策を混乱の闇に突き落としました。
トランプ大統領はツイッターで、パキスタンがアメリカのアフガニスタンでの対テロ政策に全く貢献していないばかりか「うそばかりつく」と非難し援助を打ち切ることを示唆し、「過去15年間に330億ドルを超える支援をしたのに、パキスタンはテロリストの天国を作り出しているだけ」とこきおろしました。
アメリカとパキスタンの関係はトランプ政権になってから険悪になっています。トランプ大統領はアフガニスタン情勢が一向に改善しない原因はパキスタンにあるとして、もっと犠牲を払うように圧力をかけてきました。パキスタンは、そもそもテロとの闘いを始めたのはアメリカであり、パキスタンはこれまで1230億ドルをつぎ込み6万人の殉職者を出してきた、これほどの多大な犠牲を払ってきてこれ以上なにをしろというのか、と不信感と怒りを募らせています。
パキスタンの不信感を払拭しようとテラーソン国務長官やマティス国防長官がパキスタンを訪問して、前向きな関係を確認したばかりだったその矢先のトランプ大統領の発言は、長年の同盟国との関係を損なうには十分だったようです。
アメリカは2億5500万ドルの支援を中止すると脅しをかけてきましたが、パキスタン側は援助の中止に対しては冷静です。アメリカが手を引いても経済的なダメージはそれほど大きくないと考えているからです。ここ近年、パキスタンは中国への経済依存が大きくなっています。中国からパキスタンのグワダールへと続くカラコルムハイウェイは中国の投資で整備され、物資の往来は盛んになっています。アメリカがいなくても、いまや中国が代わって支援してくれるので困ることはないのです。
実際、12月末には北京で中国、パキスタン、アフガニスタンの外相が集まり、会合を開きました。議題は現在の中国が行っているパキスタンへの経済支援をアフガニスタンまで伸ばすということでした。「地政学的にこれら3カ国は共通の利害をもち、トリプルウインで発展していく」と中国は本気です。
アメリカの外交政策は再び混乱の闇に陥りつつあり、アメリカの国益はますます損なわれつつあります。アメリカが脅しをかければ小国がひれ伏す時代はとうに終わっているのです。棍棒外交はいったい誰のための外交政策なのか、2018年を迎えるにあたり、ぜひトランプ大統領に尋ねてみたいものです。