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ラクダ主は石油王よりお金持ち?


2018年2月
野村明史


2018年1月1日から2月1日まで、サウジアラビアでは「アブドゥルアズィーズ国王のラクダ・ビューティーコンテスト」が開かれています。このコンテストは、2000年から始まり、その名の通りラクダの美しさを競うコンテストやラクダレース、しつけ具合など様々な競技も同時に開かれ、サウジの一大イベントになっています。今年は国内外から30万人以上が来場しています。

日本ではあまり馴染みのないラクダですが、その美しさは目と鼻と唇の大きさ、耳の形、身長、こぶの形や位置、肉付きなどによって決まり、主な審査対象となります。アル=アラビーヤ紙によると、今年の優勝者にはなんと約35億円もの賞金が贈られ、そのほかの競技も合わせると、賞金総額は約62億円にも上ると伝えられています。

このような高額賞金を獲得するため、出場者の中にはラクダにボトックスの注入や、整形を施すなどの不正行為を行う者もいるようで、今回のコンテストではすでに12頭のラクダが失格となりました。しかし、参加したラクダは3万頭を越えており、今回の不正発覚も氷山の一角にすぎないでしょう。

一般的なラクダは一頭約170万円、血統付きのラクダだと一頭約3000万円は下らないといわれています。ラクダの高級化が進む中、コンテストではラクダ自慢がエスカレートし、所有者同士の部族自慢にまで飛び火することもあるようです。中には、部族の名誉を傷つけたと激高し、傷害事件にまで発展するなど社会問題にもなっています。

華やかな一方、ラクダは古くからアラブ社会で荷運びや移動手段、食料としても用いられ、アラブ社会の生活に密着した伝統的な一面を担っていました。一般庶民の間でラクダは今でも食用として親しまれています。ラクダのミルクは独特の味がしますが、整腸作用があるといわれ、薬として飲まれることもあります。ドバイなどではお土産用にラクダのミルク入りチョコレートなども売られています。また、ラクダ肉はコレステロールが低く健康食として重宝されています。ラクダの肉質は固いのでミンチにするか、強力な圧力鍋で6時間くらいかけてじっくり調理されます。そのため、一般家庭での調理は難しく、多くの人は専門のレストランなどにオーダーし、接待や集まりなど特別な時によく食べられます。

このように今でもアラブで親しまれているラクダですが、コンテストや観光客相手のラクダ遊覧など娯楽の対象へと変化し、争いの火種となりつつあることが懸念されています。度を越した現状にそろそろ歯止めをかけていかなければならないでしょう。