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米中新冷戦の行方


2019年1月
川上高司


新年にはいり米中関係が悪化し国際情勢が厳しさをましています。株も乱高下し世界経済の行く末も暗雲が立ちこめています。

昨年10月4日のペンス副大統領のハドソン研究所でのスピーチは米中新冷戦を彷彿させるものでした。米国が中国に新冷戦を仕掛ける目的は、自らの覇権に挑戦する中国の台頭を抑えることにあります。かつて米国はソ連に対しあらゆる面で「封じ込め」冷戦を仕掛け、ソ連は崩壊し米国はつかの間ですが「歴史の終わり」を勝ち取りました。

しかし今回の米中新冷戦は米露冷戦とは異なっています。当時の米露は軍事力(核戦力含)ではほぼ拮抗していましたが、経済力では米国が有利でした。また、東西陣営にその経済圏がほぼ完全に別れており米露間で経済的相互依存関係は存在しませんでした。したがって、政治・軍事的対立は経済とは切り離せて戦えました。今回は、軍事力では圧倒的に米国が優位に立つものの経済力では中国が米国を凌駕する勢いです。しかも米中は「ヒト、モノ、カネ」が自由に往来する関係にある上、経済的相互依存関係が深化している。したがって、米中間で経済的紛争が激しくなればなるほど双方ともにダメージを受けることは間違いない。

問題は、米国がどこまで、いつまで、どの規模まで貿易戦争をやるのかというところにあります。現状は、米国の中国に対する対抗措置はトランプ大統領が一存で中国とディールをできない状況になっている。ワシントンの対中政策が構造的に変化をしました。

冷戦時代は“ヨーロッパ”が最前線となりましたが、米中新冷戦では“日本列島~南シナ海諸国”が最前線となり、ここで熾烈な米中間の争いが繰り広げられることとなるでしょう。

さらに、2020年の大統領選挙がスタートし、中間選挙で米議会は「ねじれ議会」となったため今後、下院でロシアンゲートに関する公聴会が開催される可能性もある。その場合、トランプ大統領は議会での窮地を避けるために米中新冷戦を激化させ国民の目をさらすでしょう。

「トゥキディデスの罠」を論じ、米中衝突の可能性に警鐘を鳴らしているグレアム・アリソンも現状を事実上の冷戦布告と評していまする。米中衝突の回避のためには、米中がリスクを真剣に受け取り、両国の首脳が定期的に頻繁に会し、政府間の作業部会を増設するなど、重層にわたる相互理解のメカニズムの創設が必要とされます。さらに、米中のリーダーや官僚のみならず一般国民の交流が不可欠でしょう。

現在、米中は相互依存関係が深化しているためMAED(相互確証経済破壊)の状況が生まれています。一歩間違えば世界恐慌に陥りかねないばかりでなく、米中の小競り合いから一気に米中の軍事的衝突にまでエスカレーションしかねません。