2020年はこうなる!
2020年1月
川上高司
2020年は未曾有の大転換期になるだろう。その台風の目になるのが、トランプ大統領であり、世界のゲーム・チェンジャーであり続けるのは間違いない。特に、2020年は大統領選挙の年であり再選を是が非でもトランプ氏は勝ち取らねばならない。大統領選挙に勝利をするためには、トランプ氏はアメリカの株高を継続させ景気を維持せねばならない。経済が悪化した状況で勝利をした大統領はいない。
現在、米経済は1854年に統計を取り始めて以来、史上最長の経済回復を謳歌している。その景気拡大は2009年に始まり12月で126ヶ月を迎える。好景気はトランプ大統領の再選には一番の追い風となる。そこで一番の不安定要因が米中貿易戦争である。
米中貿易戦争での双方の「殴り合い」は、米中の相互依存関係が相当に深化した状況で行われている。その結果、双方ともに「へたり」始め米国経済はすでに後退局面に入った兆候がある。一部投資家はアメリカの景気拡大が近く終焉するとの予測を出し、米中貿易政策をめぐる不確実性が景気に与える影響が次第に大きくなってきていると警告している。その状況を捉えて、民主党の大統領有力候補のバイデン元副大統領が米中経済戦争を大統領選挙の論点とした。激戦州のアイオワ州で「米国農家を崩壊させている」とトランプの対中政策を批判し始めた。対中貿易戦争を推し進めても明確な成果が得られなければ、トランプ大統領は苦境に陥る。それだけにトランプとしては大統領選挙の2020年11月までその景気を持たせねばならない。そのため、トランプは対中貿易戦争の手綱を緩めてくるだろう。
また、トランプ氏は「戦争は嫌いだ。経済に悪影響を及ぼすからだ」と述べ、「軍事力行使を行わない」という宣言をだしたため、米国はもはや「ペーパータイガー」(張り子の虎)となったと周辺諸国は受け取った。そのため米国の世界各国からの関与の低下はますます顕著となっている。特に、強硬派のボルトン補佐官を2019年10月にホワイトハウスから追い出したため、それを「米国の軍事力行使はない」とみた世界各国の「ならず者国家」がいっせいに行動を起こした。
まず、サウジアラビアに石油施設に対する攻撃である。米国はイランが行ったと断定しイランへの報復攻撃を行うかと思われたが、逆にトランプは国連総会でイランとの話し合いを模索した。その次はトルコがシリア北部のクルド人勢力を攻撃した。しかし、トランプはIS(イスラム国)の掃討に尽力したクルドを見捨てこれを放置した。その結果、クルドはロシアに庇護を求めシリア全土にロシアの勢力が広がった。さらに、北朝鮮が新型のSLBM「北極星3」の発射実験を「高角発射方式」で行ない脅威が増した。それにもかかわらず、トランプ大統領は北朝鮮との核協議を予定通り行った。
こういった、目まぐるしいスピードで起こるアメリカの世界からの関与が低下している。その結果として起こっている「力の空白」につけ込むパワーを巡る各国の熾烈なせめぎ合いが続いており、2020年もそれが進むであろう。そうした中、中国はロシアとの同盟関係を復活させる兆しもみせながら熾烈な争いを米国や日本に対し繰り広げるであろう。
その結果、極東地域での米中とのパワーバランスが次第に拮抗する危険性が見えてきている。そういった中、中国をしっかりと抑止し日本の安全保障を確保するためには日本独自では不可能である。日米同盟の絆を維持し強化することしか日本には選択肢はない。
川上高司
2020年は未曾有の大転換期になるだろう。その台風の目になるのが、トランプ大統領であり、世界のゲーム・チェンジャーであり続けるのは間違いない。特に、2020年は大統領選挙の年であり再選を是が非でもトランプ氏は勝ち取らねばならない。大統領選挙に勝利をするためには、トランプ氏はアメリカの株高を継続させ景気を維持せねばならない。経済が悪化した状況で勝利をした大統領はいない。
現在、米経済は1854年に統計を取り始めて以来、史上最長の経済回復を謳歌している。その景気拡大は2009年に始まり12月で126ヶ月を迎える。好景気はトランプ大統領の再選には一番の追い風となる。そこで一番の不安定要因が米中貿易戦争である。
米中貿易戦争での双方の「殴り合い」は、米中の相互依存関係が相当に深化した状況で行われている。その結果、双方ともに「へたり」始め米国経済はすでに後退局面に入った兆候がある。一部投資家はアメリカの景気拡大が近く終焉するとの予測を出し、米中貿易政策をめぐる不確実性が景気に与える影響が次第に大きくなってきていると警告している。その状況を捉えて、民主党の大統領有力候補のバイデン元副大統領が米中経済戦争を大統領選挙の論点とした。激戦州のアイオワ州で「米国農家を崩壊させている」とトランプの対中政策を批判し始めた。対中貿易戦争を推し進めても明確な成果が得られなければ、トランプ大統領は苦境に陥る。それだけにトランプとしては大統領選挙の2020年11月までその景気を持たせねばならない。そのため、トランプは対中貿易戦争の手綱を緩めてくるだろう。
また、トランプ氏は「戦争は嫌いだ。経済に悪影響を及ぼすからだ」と述べ、「軍事力行使を行わない」という宣言をだしたため、米国はもはや「ペーパータイガー」(張り子の虎)となったと周辺諸国は受け取った。そのため米国の世界各国からの関与の低下はますます顕著となっている。特に、強硬派のボルトン補佐官を2019年10月にホワイトハウスから追い出したため、それを「米国の軍事力行使はない」とみた世界各国の「ならず者国家」がいっせいに行動を起こした。
まず、サウジアラビアに石油施設に対する攻撃である。米国はイランが行ったと断定しイランへの報復攻撃を行うかと思われたが、逆にトランプは国連総会でイランとの話し合いを模索した。その次はトルコがシリア北部のクルド人勢力を攻撃した。しかし、トランプはIS(イスラム国)の掃討に尽力したクルドを見捨てこれを放置した。その結果、クルドはロシアに庇護を求めシリア全土にロシアの勢力が広がった。さらに、北朝鮮が新型のSLBM「北極星3」の発射実験を「高角発射方式」で行ない脅威が増した。それにもかかわらず、トランプ大統領は北朝鮮との核協議を予定通り行った。
こういった、目まぐるしいスピードで起こるアメリカの世界からの関与が低下している。その結果として起こっている「力の空白」につけ込むパワーを巡る各国の熾烈なせめぎ合いが続いており、2020年もそれが進むであろう。そうした中、中国はロシアとの同盟関係を復活させる兆しもみせながら熾烈な争いを米国や日本に対し繰り広げるであろう。
その結果、極東地域での米中とのパワーバランスが次第に拮抗する危険性が見えてきている。そういった中、中国をしっかりと抑止し日本の安全保障を確保するためには日本独自では不可能である。日米同盟の絆を維持し強化することしか日本には選択肢はない。