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大規模予防接種に関する情報の画一化―危機管理論の立場から


2021年6月
遠藤哲也
*昨年10月のコラム「危機対応にはリスク分析の考え方を」も合わせてお読みください。

先般、2月17日より日本でも「新型コロナウィルス感染症」の予防接種が始まりましたが、マスコミでは「いつ接種できるか」「接種時の服装は」といった全肯定で推進の報道ばかりが見られます。一方、厚労省は「同意がある場合に限り接種」と明示しており、マスコミとは少々トーンが違います。しかし多くの国民はマスコミ情報に依存しており、多様な情報に基づいて判断する事が難しいのが現状です。例えば、多くの人は接種すれば感染しも・させもしなくなると思っていますが、厚労省は「接種した方から他人への感染をどの程度予防できるかはまだ分かっていません」としています。

ネットや出版では、医学者、医師、その他の知識人による大規模接種への慎重論や若年者の接種への反対論は少なからず見られる一方、そうした異なる意見や観点に対してデマ、反ワクなどのラベリング用語で頭から決めつけが行われるなどの異論を許さぬ雰囲気も在ります。昨10月の記事で述べたように、危機政策はどうしても過剰に傾きがちですが、対策には負の影響としてのトレードオフ被害が伴う以上、可能な限り「適度」を目指すべきで、その為には対策過剰への批判意見も自由に語られねばなりません。この閉ざされた言語空間の下で進む大規模接種は本当に妥当なのでしょうか?

6月1日、厚労省発表の新型コロナによる日本での年代別死亡者数(累積)では70代以上が9639人で全体の9割を占め、60代784人、20代7人、10代0人です。世代別の死亡率では、高リスク群の80代以上でも大まかに0.063%、70代で0.016%です。つまり日本では1年5ヵ月を経て、どの世代であろうと99.93%以上の人は新型コロナで死亡しませんし、年間死者約15000人とされる受動喫煙(厚労省)など、より高リスクの死因は幾つもあります。

一方で厚労省が「予防接種の副反応による健康被害は極めて稀ですが、不可避的に生ずる」とするように、大規模接種をすれば必ず副反応のトレードオフ被害が出ます。また、予防接種用薬の開発には、普通は「早くても10年」ぐらいかかる(石井健教授・免疫学)とされ、今回は1年未満で開発されたものを日本政府が「特例承認」したものです。過去には「5~10年たった後に副作用が判明し、使用禁止になるもの」もあり(岡田正彦名誉教授・予防医療学)、厚労省も、新種の予防接種用薬のため「これまでに明らかになっていない症状が出る可能性があります」としています。実際、医療関係者による強い副反応の経験談はしばしば目にしますし、5月末の厚労省公表では副反応疑いでの死亡は85件とあり、別に重篤化846件(死亡含む)との資料もあります。個別例ですが、原田曜平信州大特任教授は、接種後に自宅で倒れて搬送され後日面会した父親について、両手が腫れ上がり、両足から体にかけて無数の赤い斑点、後頭部には多くの皮膚がめくれた跡、後ろの首筋はやけどのようなケロイド状…と痛々しい容体を記しています。海外についても、英国等での好成績の報道ばかりが目につきますが、感染数が極少だったのに2月の接種開始後から激増したカンボジアのように、予防接撞数と感染者数増が相関を見せた国・地域も複数あります。

もう一つ重要なのは、米CDCのファウチ所長が「少なくとも半年は持続」と発言しているように、コロナのように変異が激しいRNAウィルスに対する予防接種は効果の持続が期待し難い事です。そもそもコロナの被害が小さい日本で、その対策において、76年の米国で30人の副反応死者発生で中止された豚インフル予防接種の例等に鑑みても有意にトレードオフ・リスクが在り、効果の持続も覚束ないとなれば、性急に大規模接種を行う理由が見出せません。特に、死亡リスクが低い60代以下の層、大半が無症状・軽症の若年層に一定リスクを負わせて集団接種を行う有意性は見出し難いものがあります。過去に2万人にインフル接種を自ら行ってきたという上記の岡田名誉教授、ドイツ感染研究所の予防接種用薬開発室長やBMゲイツ財団勤務などを歴任し世界的な予防接種用薬の権威であるG・V・ボッシュ博士、ファイザー社の元副社長で呼吸器系研究者でもあるM・イェードン博士、エイズ・ウィルスの発見者でノーベル医学生理学賞受章者のL・モンタニエ博士などが今回の接種用薬のリスクについて強い警告を発してもいます。

この予防接種は70代以上の高リスク群を主眼に、公平で具体的な情報を与えた上で、それでも接種を望む人のみが受けるべきであり、事実上の接種強要が起こる職場・学校単位での集団接種を行うべきではありません。また、接種歴は機微の個人情報であり、非接種者への差別を許さぬ為に、雇用時や施設利用時などに接種歴を問うたり、スタッフの接種済を宣伝利用したりする事は明確に禁じられるべきでしょう。

追記:本稿脱稿後、6月9日に厚労省より発表された資料では、新型コロナの予防接種による副反応疑いでの死亡者の報告は6月4日までで計196件となった。また、5月30日迄の医療機関よりの副反応疑いでの重篤の報告、計1260件(死亡含む)との資料もある。