2024年米国大統領選挙を振り返る
2024年12月
佐藤 丙午
佐藤 丙午
2024年に行われた米国の大統領選挙では、11月5日に選挙人選挙が行われ、トランプ氏が大統領に返り咲くことになりました。選挙結果は、トランプが312票、民主党のハリス氏は226票獲得し、票差はつきましたが、一般投票では共に7000万票以上獲得しており、僅差であったとの評価も妥当だと思います。
大統領選挙では、これまで民主党に投票する傾向が強かったペンシルバニア州などの、いわゆる「青い壁」州において共和党が優勢を得たことが、勝利の鍵になりました。21世紀に入って以降、米国大統領選挙において民主共和両党の獲得州は固定化されてきましたが、今回の選挙でもその傾向は変わらなかったため、一部の諸州(今回の選挙では7州が該当します)の動向が選挙の結果に影響を与えたのです。
選挙では様々な争点が語られました。特に民主党の敗因として、ハリス氏の政治家としての資質問題や、党内の支持勢力の分裂を恐れ、政策論議を徹底的に回避した政治姿勢など、多くの要因が指摘されています。その中で、今後の米国政治に影響を与える要因とも考えられる、「民主主義の危機」を取り上げたいと思います。
実は今回の選挙において「民主主義の危機」は、民主と共和の双方で取り上げられています。しかし、その意味は異なります。民主党が「民主主義の危機」をいう場合、それは2020年の大統領選挙において、トランプが選挙結果を受け入れず政権移行を拒否し、最後は支持者が議会に突入する事件を起こしたことを指しています。民主主義において、敗者が敗北を認めるというのが民主主義の精神の最大の行事なので、それを拒否したトランプは、米国政治制度や憲法、さらには民主主義自体に挑戦しているという解釈になります。つまり、民主主義的精神の危機であるということです。
それに対して共和党では、民主主義のもとで必然的に進む、階級の固定化に対する危機を指摘します。既得権積層は、民主主義のシステムを利用して、その利益が永続するように操作することが可能です。極端な言い方ですが、貧富の差を放置し、なおかつ貧困側が政治制度を通じて異議申し立てが困難になるように、社会規範などを支配層に都合の良いように動員することで、社会制度の変動を抑えるように政治を操作します。共和党側が民主党をエリート主義の政党と指摘するのは、その点を問題視しているのです。
両党の民主主義に対する危機感は、それぞれ意味があり、どちらが正しい、あるいはどちらがより大きな危機であると判断できるものではありません。むしろ、民主主義の政治制度を機能させる上で、共に考えるべき問題点だと思います。ただ、選挙は結果なので、米国民の認識に対して、どちらがより響いたかということが重要ですし、2024年の米国政治では共和党側の指摘に支持が集まったということなのかと思います。
米国政治における民主主義の危機問題は、2024年以降も続いていくと思います。今後の展開を見守りたいと思います。
大統領選挙では、これまで民主党に投票する傾向が強かったペンシルバニア州などの、いわゆる「青い壁」州において共和党が優勢を得たことが、勝利の鍵になりました。21世紀に入って以降、米国大統領選挙において民主共和両党の獲得州は固定化されてきましたが、今回の選挙でもその傾向は変わらなかったため、一部の諸州(今回の選挙では7州が該当します)の動向が選挙の結果に影響を与えたのです。
選挙では様々な争点が語られました。特に民主党の敗因として、ハリス氏の政治家としての資質問題や、党内の支持勢力の分裂を恐れ、政策論議を徹底的に回避した政治姿勢など、多くの要因が指摘されています。その中で、今後の米国政治に影響を与える要因とも考えられる、「民主主義の危機」を取り上げたいと思います。
実は今回の選挙において「民主主義の危機」は、民主と共和の双方で取り上げられています。しかし、その意味は異なります。民主党が「民主主義の危機」をいう場合、それは2020年の大統領選挙において、トランプが選挙結果を受け入れず政権移行を拒否し、最後は支持者が議会に突入する事件を起こしたことを指しています。民主主義において、敗者が敗北を認めるというのが民主主義の精神の最大の行事なので、それを拒否したトランプは、米国政治制度や憲法、さらには民主主義自体に挑戦しているという解釈になります。つまり、民主主義的精神の危機であるということです。
それに対して共和党では、民主主義のもとで必然的に進む、階級の固定化に対する危機を指摘します。既得権積層は、民主主義のシステムを利用して、その利益が永続するように操作することが可能です。極端な言い方ですが、貧富の差を放置し、なおかつ貧困側が政治制度を通じて異議申し立てが困難になるように、社会規範などを支配層に都合の良いように動員することで、社会制度の変動を抑えるように政治を操作します。共和党側が民主党をエリート主義の政党と指摘するのは、その点を問題視しているのです。
両党の民主主義に対する危機感は、それぞれ意味があり、どちらが正しい、あるいはどちらがより大きな危機であると判断できるものではありません。むしろ、民主主義の政治制度を機能させる上で、共に考えるべき問題点だと思います。ただ、選挙は結果なので、米国民の認識に対して、どちらがより響いたかということが重要ですし、2024年の米国政治では共和党側の指摘に支持が集まったということなのかと思います。
米国政治における民主主義の危機問題は、2024年以降も続いていくと思います。今後の展開を見守りたいと思います。