米国とグリーンランド
2025年1月
佐藤 丙午
佐藤 丙午
トランプ大統領が2024年の大統領選挙で当選し、2025年1月に「再び」グリーンランドの取得を表明したことで、この島の存在が注目を集めています。
トランプ大統領の主張は取得に対する関心に言及していますが、その手段が買収なのか軍事的な占領なのかは明言していません。後にインタビューを受けたバンス副大統領は、軍事的な手段の使用を否定しています。
グリーンランドは1953年までデンマークの植民地でした。その後、2009年にデンマークの自治法や協定が改正されるまでその自治領、09年以降は自治政府が領域内の政治運営を行なっています。ただし、デンマークの憲法内にグリーンランドの領有が規定されているので、実際に米国による取得になると、デンマーク憲法の改正が必要になります。
グリーンランドと米国の関係は古く、その開拓がデンマークと米国が共同で実施されてきた過去があります。さらにデンマークはNATO加盟国であり、グリーンランドの北部にピトゥフィク宇宙基地(旧チューレ空軍基地)とナルサルスアーク空軍基地の設置を米国に許しています。
トランプ大統領による領有の言及の背景には、グリーンランドの独立を求める勢力の存在があります。デンマーク政府はグリーンランド開発に消極的であり、グリーランドの経済は漁業関係によって支えられています。デンマークが天然資源の開発による経済発展を制限しており、グリーンランドは経済的貧困を強要されているという指摘は、潜在的に独立勢力が支持するものです。
さらに、グリーンランドの軍事的な役割(米国とカナダに対するロシアや中国の攻撃に備える役割)を考えると、グリーンランドの漁業や水産加工業に中国系の企業が参画し、中国人労働者の在留が増加している現状を考えるとき、現状のグリーンランドが安全保障上のリスクになる可能性があるとの主張にも考慮すべき点があります。この問題は、パナマ運河の運営に中国系の企業が参画しているとして、運河の返還を米国が求めている構図と似ています。
米国はトルーマン大統領がグリーンランドの買収を提案したことがあります。この時もデンマークは拒否しています。ただ、グリーンランド自治政府がデンマークからの独立を達成し、米国の「領有」に応じたとしても、同地が米国の51番目の州になるわけではないと思います。もし領有が可能になったとしても、米国領土の定義に基づき、自治政府を持つ未編入地域である、グァム、北マリアナ諸島、場合によってはプエルトルコの様な扱いになると予想されます。
もっとも、トランプ大統領による非現実的とも思える領有化の主張は、他の政治目的を実現するための手段であると理解すべきだとは思います。
トランプ大統領の主張は取得に対する関心に言及していますが、その手段が買収なのか軍事的な占領なのかは明言していません。後にインタビューを受けたバンス副大統領は、軍事的な手段の使用を否定しています。
グリーンランドは1953年までデンマークの植民地でした。その後、2009年にデンマークの自治法や協定が改正されるまでその自治領、09年以降は自治政府が領域内の政治運営を行なっています。ただし、デンマークの憲法内にグリーンランドの領有が規定されているので、実際に米国による取得になると、デンマーク憲法の改正が必要になります。
グリーンランドと米国の関係は古く、その開拓がデンマークと米国が共同で実施されてきた過去があります。さらにデンマークはNATO加盟国であり、グリーンランドの北部にピトゥフィク宇宙基地(旧チューレ空軍基地)とナルサルスアーク空軍基地の設置を米国に許しています。
トランプ大統領による領有の言及の背景には、グリーンランドの独立を求める勢力の存在があります。デンマーク政府はグリーンランド開発に消極的であり、グリーランドの経済は漁業関係によって支えられています。デンマークが天然資源の開発による経済発展を制限しており、グリーンランドは経済的貧困を強要されているという指摘は、潜在的に独立勢力が支持するものです。
さらに、グリーンランドの軍事的な役割(米国とカナダに対するロシアや中国の攻撃に備える役割)を考えると、グリーンランドの漁業や水産加工業に中国系の企業が参画し、中国人労働者の在留が増加している現状を考えるとき、現状のグリーンランドが安全保障上のリスクになる可能性があるとの主張にも考慮すべき点があります。この問題は、パナマ運河の運営に中国系の企業が参画しているとして、運河の返還を米国が求めている構図と似ています。
米国はトルーマン大統領がグリーンランドの買収を提案したことがあります。この時もデンマークは拒否しています。ただ、グリーンランド自治政府がデンマークからの独立を達成し、米国の「領有」に応じたとしても、同地が米国の51番目の州になるわけではないと思います。もし領有が可能になったとしても、米国領土の定義に基づき、自治政府を持つ未編入地域である、グァム、北マリアナ諸島、場合によってはプエルトルコの様な扱いになると予想されます。
もっとも、トランプ大統領による非現実的とも思える領有化の主張は、他の政治目的を実現するための手段であると理解すべきだとは思います。